壺齋散人の美術批評 |
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北方の熊:ドーミエの風刺版画 |
1863年から1866年にかけて、クリミア半島を舞台にして、英仏及びオスマントルコの同盟軍とロシアと間で戦争が起こった。世に「クリミア戦争」と呼ばれている。この戦争にドーミエは関心を示し、フランス人の立場から野蛮なロシア人をこき下ろす版画を作った。「北方の熊(L'ours du nord)」と題したこの石版画は、ロシアを罵倒した最たるものである。 王冠をかぶり、松明と剣を振りかざした白熊は、ロシア皇帝ニコライ一世である。彼の前には、ロシアの人民がひれ伏している。熊も熊だが、それにひれ伏すロシアの人民も野蛮な連中だという偏見がこの絵にはこめられている。 説明書きに「あらゆる熊の中でも、もっとも不愉快な熊」とあるが、ロシア皇帝が不愉快な熊になったのは、フランスの利権を脅かしたからだ。1848年のヨーロッパじゅうの革命騒ぎの際には、フランス人の多くは、革命拡大を阻止する砦としてロシア皇帝を見ていたのである。 (1854年4月 リトグラフ 37.0×26.2㎝ シャリヴァリ) |
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