壺齋散人の 美術批評 |
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グレーのフェルト帽の自画像:ゴッホの自画像5 |
ゴッホの絵に顕著な変化が生じるのは1887年の年初の頃である。それまでの暗い色調から明るい色調への劇的な変化が現れる。ゴッホはパリで様々な画家と交流し、また先人たちの業績を自分なりに貪欲に研究することを通じて、明るい色調の絵を模索するようになったのだと思われる。1837年2月頃の作品「カフェ・タンブランの女」は、その最初の成果であろう。 この「グレーのフェルト帽の自画像(Self-Portrait with Grey Felt Hat)」は、そうした時期に描かれた実験的な意義を持つ作品だと考えられる。時期的には1886年の暮から翌年の初めにかけての冬のことだったろう。同時期にほとんど同じような構図の作品をもう一枚書いているが、そこにも色彩への強いこだわりが感じられる。 色彩が明るくなっただけではなく、筆使いも意欲的になった。絵の具を単純に塗るのではなく、筆を叩きつけるようにして塗っている。 この作品は、後に弟テオの妻となるヨーの兄アンドレ・ボンゲルにプレゼントされたという。 (1886年~87年冬、カルトンに油彩、41×32cm、アムステルダム市立美術館) |
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