壺齋散人の 美術批評
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ポール・ゴーギャンに捧げる自画像:ゴッホの自画像18




1888年10月、ゴッホはゴーギャンをアルルに招待し、ともに共同生活を始めるのだが、それに先立つ1か月ほど前に、自画像の相互献呈を行った。この絵は、ゴッホからゴーギャンに献呈されたものである。

弟テオにあてて書いた手紙の中で、ゴッホはこの絵に触れて次のように言っている。

「僕はゴーガンへの返事でこう書いた。肖像画で自分の個性を誇張することが許されるなら、僕は自画像の中に単に僕自身だけでなく、全般的な意味の一人の印象派画家、永遠の仏陀の素朴な崇拝者である坊主でもあるかのようにこの肖像画は考えて描いたのだ、と・・・僕の肖像画はゴーガンに送るが、彼は手放さずに持っていてくれるだろうから、君もそのうちに見てくれるだろう。それは全体の灰色と淡いヴぇロネーズ緑が対照になっているものだ。服は例の青い縁取りの茶色の上着だが、僕はその茶色を真紅にまで誇張し、青い縁取りの幅も広げた。頭は明るい厚塗りで形づけ、ほとんど影のない明るい背景に相対している。ただ目尻は日本風にすこし釣り上げた」(岩波文庫版「ゴッホの手紙」)

この文章を読むと、ゴッホは対象を忠実に再現するのではなく、そこに自分の自由な創造の手を加えているということがわかる。

(1888年9月、キャンバスに油彩、62.0×52.0cm、ハーヴァード大学フォッグ美術館)





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