壺齋散人の 美術批評
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聖アトス山:ミュシャのスラヴ叙事詩



(聖アトス山)

聖アトス山はギリシャ正教の聖地。ギリシャ最東部、港町テサロニケの先に三本並んで突き出ている半島のうちもっとも東側の半島の先端にある山だ。この半島を作家の村上春樹がトレッキングしたそうだが、切り立った山々の合間に修道院があるばかりの異様な雰囲気のところだそうだ。そこがギリシャ正教の聖地になっているということらしい。


ギリシャ正教はロシア人をはじめ、スラヴ人の間に強い影響を及ぼした。ミュシャの祖国チェコは、どちらかというとカトリックの影響が強く、ギリシャ正教はあまり普及していないのだが、ミュシャはスラヴを代表する信仰として、それをこのシリーズで取り上げたのだろう。

巨大な修道院の内部を描いている。壁沿いに、聖母マリアのほかさまざまな聖人の像が飾られ、その前で巡礼者たちが司祭の祝福を受けている。



これは、祝福を受けて、家路につく父子であろう。その表情には、祝福を受けた満足感が漂っている。

(1926年 カンバスにテンペラ 405×480㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)


(菩提樹の下でのスラヴの若者たちの誓い)

17世紀の初め頃、チェコは神聖ローマ帝国の支配下にはいった。その頃の神聖ローマ帝国はハプスブルグ家が皇帝を出していたので、チェコとしては異民族に支配されていたことになる。

19世紀の後半、ヨーロッパ各国でナショナリズムの運動が高まりをみせると、チェコでも民族主義的な運動が盛んになった。この作品は、そうした民族主義的な運動をテーマにしたものである。

スラヴの守護神スラヴィアの前で、若者たちが民族のために働く誓いをしている。画面左手で、リラを引いている女性はミュシャの娘ヤロスラヴァ、画面右手で、それを見ている半裸の男性はミュシャの息子イージーだという。

(1926年 カンバスにテンペラ 405×480㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)


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