壺齋散人の 美術批評 |
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スープ:ピカソ、子どもを描く |
ピカソは青の時代を通じて母子像を多く描いた。それらの多くは、どこかさびしさと云うか、悲惨さを感じさせ、親子の情愛の喜びといったものとは縁遠い雰囲気のものだった。それは1901年のパリ滞在中にサン・ラザール監獄で見た、受刑者母子の印象に、引きずられていたからだろうと推測される。 「スープ」と題されたこの絵は、青の時代の代表作の一つに数えられているものだが、他の母子像とは異なった雰囲気を見て取ることが出来る。母親も子供も決して幸福そうな表情をしていない点では、他の悲しげな雰囲気の母子像と共通性を感じさせるが、この絵には、単に悲しさだけではなく、生きることの勢いというようなものを感じさせる。時に、子どもの描き方の中に。 母親はうなだれるようにしてスープの入った皿を両手に持ち、それに向かって子どもが両手を高く差し出してスープ皿を受け取ろうとしている。その表情には、食べること、つまり生きることへのこだわりのようなものが出ている。実際子どもは、待ちきれないような様子で母親の方へと走り寄っているようなのである。 この絵には、ピュイ・ド・シャヴァンヌの影響が指摘されている。ピカソは1898年に完成した彼のパンテオンの壁画に魅せられ、それを模写していまでいるが、その壁画の中の「パリに食料を与える聖ジュヌヴィエーヴ」という場面が、この絵のヒントになったのではないかと言われている。 ピカソは当初、一人の女が二人の少女にスープを与える場面を描いたが、後に子どもを一人にした。 (1902年、キャンバスに油彩、38.5×46.0cm、トロント、オンタリオ美術館) |
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