壺齋散人の 美術批評 |
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ボールに乗る軽業の少女:ピカソ、子どもを描く |
1904年、ピカソはパリに四度目の旅行をしたのをきっかけに、そのままパリに定住するようになった。そんなピカソがもっとも深く交際したのは詩人のアポリネールである。二人の交際ぶりは、サルタンバンクの軽業師を好んで自分たちの芸術のインスピレーションにしたことにもあらわれている。ピカソは、サルタンバンクを度々描く過程の中から、次第に青の時代を脱して、バラ色の時代と呼ばれる、明るい色彩の世界へと踏み込んでいくのである。 「ボールに乗る軽業の少女(L'Acrobate a la Boule)」と題したこの絵は、青の時代からバラ色の時代への過渡期に描かれたものである。ピカソ独特の青の使い方がまだ残っている一方、背景は赤っぽい暖色を用いている。この暖色がもっと意図的に使われるようになると、そこにバラ色の時代の明るい色遣いの世界が出現するわけである。 画面左手に、ボールに乗って平衡を保っている少女が描かれ、その手前には、がっしりとした体格の男が、角ばった箱に腰かけて少女の演技を見守っている。遠景には犬を伴った母子が小さく描かれているが、これらすべては皆、上下の垂直な動きを現している。これに対して、背景はいくつかの横の線によって分割されているので、上下のヴァーティカルな運動と、左右のホリゾンタルな運動とが中和させられ、画面に安定感をもたらしている。ピカソなりの、構図へのこだわりなのだろう。 (1905年、キャンバスに油彩、147×95cm、モスクワ、プーシキン美術館) |
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