壺齋散人の美術批評 |
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夢の中で:ルドンの石版画 |
(孵化) ルドンは、石版画家として世間に現れた。最初の石版画集「夢の中で」を刊行したのは39歳の時だから、画家としてのスタートは遅かったといえる。それまでは、つまり若いころは、あまりさえない風景画を描いており、ほとんど注目されることはなかった。ルドンに石版画の手ほどきをしたのは、風変わりな浪漫派芸術家ブレダンである。この男はシャンフルーリの小説「犬っころ」のモデルになったことでも知られる。画家としては、ロマン派に属し、古典的な絵画ではなく、激情的な雰囲気を感じさせる画風である。ルドンは、技術のみならず、画風もブレダンから学んだようである。 上の絵「孵化」は、「夢の中で」の冒頭に収載された。丸い形をしたさなぎのようなものから、人間の頭が「孵化」してくるイメージを描いている。これは現実にはありえないものなので、ルドンが最初から幻想的なイメージにこだわっていたことを感じさせる作品だ。(1879年 リトグラフ 53.2×37.0㎝) (幻視) 「幻視」と題するこの石版画は「夢の中で」の八番目に収載された作品。幻視のイメージを、巨大な目玉から発せられる光によって表現している。ルドンの目玉へのこだわりは異常といってもよく、以後繰り返し描き続ける。(1879年 リトグラフ 27.0×19.6㎝) |
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