壺齋散人の美術批評
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キュクロプス:ルドンの神話風絵画




キュクロプスはギリシャ神話に出てくる単眼の巨人族。火山ないし鍛冶屋の神といわれるが、ホメロスの「オデュッセイア」には旅人を食らう凶暴な怪物として描かれている。ルドンのこの作品は、キュクロプス族の一人ポリュメーモスが、ガラテーアという娘に恋い焦がれるさまを描いている。

この絵の中のキュクロプスのポリュメーモスは、悲しげなまなざしをしている。というのも、彼の恋い焦がれるガラテーアは、他の青年に恋しているからである。その青年は画面にはあらわれず、娘がひとり裸でねそべり、髪をもてあそんでいる。

この絵の意義は、石版画時代における目玉のイメージを、黒ではなく色彩豊かに表現したことにある。しかも目玉は、一つだけとはいえ、顔の重要な部分として表現されている。その目玉に人間的な雰囲気をただよわせようとすると、このような悲しげな印象を帯びるのであろうか。

(1900年 板に油彩 64×51㎝ オッテルロー、クレーラー=ミュラー美術館)



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