壺齋散人の美術批評 |
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カリバンの眠り:ルドンの幻想風絵画 |
カリバンは、シェイクスピアのロマンス劇「テンペスト」に出てくるキャラクターである。「野蛮で奇形の奴隷」と紹介されており、また登場人物の口をとおして「魚と怪物のあいの子」と呼ばれ、具体的なイメージとしては、頭は魚で、鰭が手足のように伸び出ている。ヒエロニムス・ボスの奇妙な作品「干草車」に描かれている魚の怪物に近いイメージだ。 ルドンは、そのカリバン(英語の発音ではキャリバン)のイメージを定着させたつもりのようである。だが、この絵の中のカリバンは魚のイメージではなく、人間として描かれている。耳が仏教の仏のように大きいところがミソであろう。そのカリバンが、木の幹の根本でうたたねをし、その周囲に人間の顔をした化け物が飛び回っている。 このイメージは、シェイクスピアの原作には出てこないから、ルドンによる創造なのであろう。非常に幻想的な雰囲気を感じさせる。そうした幻想性は、石版画の頃からみられたものだが、油彩画においても、次第に強まっていく。 「1900年 カンバスに油彩 48.3×38.5㎝ パリ、オルセー美術館) |
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