壺齋散人の美術批評
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ヴィオレット・エーマン:ルドンの肖像画




晩年のルドンは、花瓶にいけた花を好んで描くとともに、花をあしらった女性の肖像も多く描いた。「ヴィオレット・エーマン(Violette Heyman)」はその代表的なものである。若い女性が横顔を見せた姿で、花と向き合っている構図である。

花の描き方は、かなりデフォルメされており、具象的なイメージではなく、象徴的な雰囲気をただよわせている。一方、花を見つめる女性は、リアルにつまり具象的に描かれており、横顔ながら、知性も感じさせる。

モデルの女性は、ルドンの知人コレクターの姪であった。おそらくその知人の依頼を受けて描いたのであろう。ふつう、肖像画は縦長の画面いっぱいに人物を配置するものだが、これは横長の画面にモデルと花とを共存させている。そこにはルドンのこだわりがあったのであろう。

(1910年 紙にパステル 72×92㎝ クリーヴランド美術館)



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