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聖ゲオルギウスと竜:ルドンの幻想風絵画




聖ゲオルギウスは、古代ローマ時代の殉教者として知られる。その生涯は謎が多い。だいいち、どこで活躍していたかが明確でない。東ヨーロッパからグルジアにかけて、かれを主人公とする伝説が流布されている。一番有名なのは、グルジアにおけるドラゴン退治の伝説で、これは「黄金伝説」にも出てくる。ルドンはおそらく黄金伝説を踏まえてこの作品を描いたのだと思う。

グルジアの伝説では、聖ゲオルギウスはグルジア人をキリスト教に改宗させた聖人ということになっている。そのきっかけがドラゴン退治である。日頃人々をくるしめていた竜がいて、それが美しい女性をいけにえに求めた。なげく人々の前に現れた聖ゲオルギウスは、キリスト教に改宗するなら、この竜を退治してやろうといった。人々が改宗を約束したので、聖ゲオルギウスは竜を退治した、というような話である。

図柄は、中央に竜を配置し、その上部に白馬にまたがった聖ゲオルギウスを配している。輪郭がはっきりしないのだが、聖ゲオルギウスは槍を構えているようである。

(1910年 カンバスに油彩 29.5×27.0㎝ ケルン、ヴァルラフ・リヒャルツ美術館)



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