壺齋散人の美術批評
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パンドラ:ルドンの幻想風絵画




パンドラは、ギリシャ神話に出てくるキャラクター。「パンドラの箱」の逸話で有名である。これは人間の悪徳の起源をテーマにしたもので、聖書の原罪の起源を語った部分と似た話である。西洋美術では、格好のモチーフとして、長らく取り上げられてきた。ルドンもいくつかの作品で、パンドラをモチーフに取り上げている。
これ「パンドラ(Pandore)」はその一つ。樹木を背景にした花園の中に、小さな箱を両手で抱えた姿のパンドラが描かれている。パンドラは顔をうつむけて箱を見つめ、左手でいまにも箱の蓋をあけようとしている。箱の蓋があいたあとには、人間にとってのあらゆる災厄が飛び出してくるのだが、パンドラにはその予感はなく、ただ好奇心から箱をあけようとしている。その無邪気な様子が伝わってくる。

これよりしばらく後に描いたパンドラは、ブルーの衣装を着て、しかも後ろ向きである。こちらは、全裸の姿をさらしており、その分、パンドラの無邪気さが強調されている。だが、パンドラの肌の色は肉感的である。

(1910年 カンバスに油彩 143.5×62.2㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)



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