壺齋散人の美術批評
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貝殻:ルドンの静物画




「貝殻(La Coquille : en bas à droite, petit coquillage, dans l'ombre)」と題されたこの絵は、タイトルどおり貝殻を描いたもの。画面中央に大きな貝殻を描き、その右下に小さな貝殻を描いているのは、原作の解題にあるとおりだ。

大きな貝殻のほうは、女性器を彷彿させるという指摘がある。ルドン自身がそう意識していたかどうかはわからぬが、よく見ると見当はずれな指摘とも思えない。一方、小さな貝殻のほうには、そうした解釈を許す余地はない。もしかしたらルドンは、大きな貝殻の強烈なイメージを中和させるために、この小さな貝殻を描き加え、これらは女性器などではなく、本物の貝殻を描いたのだと強調したかったのかもしれない。

暗鬱な感じの背景から、色鮮やかに浮かび上がった貝殻のフォルムが、圧倒的な存在感を醸し出す。

(1912年 紙にパステル 52.0×57.8㎝ パリ、オルセー美術館)



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