壺齋散人の美術批評 |
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ヴィーナスとヴォルカン:ブーシェのロココ世界 |
ヴィーナスとその夫ヴォルカンをモチーフにした作品を、ブーシェはいくつも作っている。年代も長きにわたっている。「ヴィーナスとヴォルカン(Vénus et volcan)」と題したこの作品は、もっとも初期のもの。ローマ賞を受賞した翌年の1732年に制作している。 これは、ヴォルカンの仕事場である鍛冶場を訪れたヴィーナスを描いている。夫婦であるから、このように仲睦まじくしているのは自然なことであるが、そこはヴィーナスのこと、夫といちゃつくためではなく、息子のアエネイスの為に、楯でも作ってほしいと頼みに来たのだという解釈もある。 夫のヴォルカンが、色黒の野暮な男に描かれているのに対して、ヴィーナスのほうは、色白の肌で、豊満そのものの肉体をさらしている、ブーシェの描く女性は、豊満な肉体を誇るものが多い。この作品は、そうした傾向が早く表れた例である。 二人のまわりには、大勢のキューピッドがたわむれている。ヴィーナスが連れているキューピッドは一人というのが相場なのだが、ここでは大勢のキューピッドが登場して、それぞれ思い思いの勝手なことに夢中になっている。 (1732年 カンバスに油彩 163.9×82.6㎝ ロンドン、ウォーレス・コレクション) |
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