壺齋散人の 美術批評
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傲慢:ブリューゲル「七つの大罪シリーズ」




傲慢は一般的には罪源の中でも最も憎むべきものとみなされてきた。というのも、この心を持つ者は謙虚さを失い、神をも恐れず、不遜になるからだ。傲慢な人間はしたがって、地獄に落ちる運命にある。

この絵の中では、着飾って鏡の中にいる自分に見とれる女が傲慢の象徴だ。女の脇にはクジャクがいるが、クジャクは虚栄のシンボルであり、したがって傲慢の従者とみなされるのだ。

絵の中にいる怪物たちは、どれも傲慢な振舞で、人の目を驚かす。左下にある頭から直接足が伸びた怪物はグリロスといって、ボスから借りたものだ。このグリロスも尻尾にクジャクの羽をつけ、鏡の中の自分の姿に見とれている。またその横にはうつ伏せになって、自分の股の間から、鏡に映った自分のケツを眺めている怪物がいる。

右手には怪物に洗髪してもらっている女や散髪してもらっている男が描かれているが、ふたりともおしゃれがしたいのだろう。二人がいる小屋の屋根には、自分の尻から出た排せつ物を皿に受け止めている男がいる。その皿からは排せつ物が流れて出ているが、これは何の暗喩だろうか。

中心の傲慢な女の背後には、やはり傲慢な表情の怪物たちが裸の女性を引き立てている。かれらにとって裸とは、何の価値もないことの象徴なのだ。

中景には巨大な口をあけた怪物がいるが、この口が地獄の入り口を表していることは、これまでに考証したとおりだ。傲慢の罪に染まったものは皆、地獄に落ちるのである。





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