壺齋散人の 美術批評 |
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激怒:ブリューゲル「七つの大罪」 |
版画の下にある銘文には、ラテン語で「激怒は顔を腫れあがらせ、血管は血でどす黒くなる」と書かれている。激怒という感情の強烈な側面を強調しているのだろう。 中央に擬人的イメージとして置かれた女性は、右手に剣を、左手に松明を持ち、向かうものはことごとく殺すと叫んでいるようだ。彼女の前にいるクマは人間の足に食いかかっているが、クマは激怒を象徴する動物だとされていた。またクマの向う側には、兵士たちが巨大なナイフを持ち上げて、人間たちをなで斬りにしている。激怒は何もかもを破壊する激しい感情なのだ。 中央には巨大な老婆が描かれているが、これは悪女フリートを表すとされている。この版画の中での悪女フリートは、左手にフラスコを持ち、口にはナイフを加えているが、なぜか右手は骨折している。そのマントの中には樽が忍んでいて、樽の中では男たちが殺し合いを演じている。この図柄はボスの「干草の車」の中にも出てくる。 また魔女の背後の木のうろの中では、怪物が人間を串刺しにしているが、これもボスの「最後の審判」から借りたイメージだ。 このほか画面には、激怒から殺したり殺されたりする光景が数多く描かれている。左手前面には、命乞いをする男に剣を振り落す男、弱いものを貪り食う怪物があり、左手には釜茹でにされる男女がいる。 遠景には兵隊たちに追われて卵の中に逃げ込む人間たちや、運悪くつかまって首を吊られる人間たちが描かれている。 どれもみな、激怒の破壊的な結果を描き出して、余念がない。 |
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