壺齋散人の 美術批評
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邪淫:ブリューゲル「七つの大罪シリーズ」




画面中央の巨木のうろの中では、怪物の愛撫を受ける裸の女性があり、怪物の背もたれには雄鶏が止まっている。雄鶏は邪淫の象徴とされる動物だ。

この絵には邪淫の行為として、男女の縺れ合いが一面にちりばめられている。とりわけ礼拝堂の周りに抱き合う男女が多いのが面白い。枯れ木の上の貝の化け物の中に、透明の球体にくるまれて抱き合う男女が描かれているが、同じような図柄がボスの油彩画にもある。

画面右手には犬同士が、画面の下の方では怪物たちが交尾をしている。また女を愛撫する男の背後には、男を抱いている女の下半身が垣間見える。

画面の中景には姦淫の罪で引き回される男が描かれ、その周りにははやし立てる怪物たちがいる。蛙のような怪物に交じって、アダムとイブを思わせる男女が、行列に加わっているのは、何を意味するのか。

邪淫は淫乱と通じる、だからこの絵にはそうした淫乱なシーンも見える。陰部と尻をむき出しにして仰向けに転がった女、一つの穴が口と肛門をかねている怪物、肛門にフォークを突っ込んだ男の尻、自分のペニスをナイフで切ろうとしている男といった具合だ。

右手下には、脱糞する男と、その肛門を伺っているキジのような鳥が描かれている。男の脱糞するシーンは、ブリューゲルが好んだものだ。

ブリューゲルにおいては、セクソロジーはスカトロジーと深く結びついているわけである。





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