壺齋散人の 美術批評
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節制:ブリューゲルの版画「七つの徳目シリーズ」




ブリューゲルは「七つの大罪シリーズ」の後で、「七つの徳目シリーズ」を手掛けた。このシリーズもやはり、ヒエロニムス・コックの依頼を受けたものだった。コックはこのシリーズのために、大罪シリーズの彫師ピーテル・ヴァン・デル・ヘイデンよりも腕がいいフィリップス・ハレを起用した。

だが作品の出来栄えは彫師の腕とはあまり相関関係がないようだ。このシリーズは大罪シリーズに比べ、いささか精彩に欠けるようである。大罪シリーズに出てくるボス風の怪物は姿を現さず、代って分別臭い隠喩が用いられている。

シリーズの中で最も優れていると思うのは「節制」を描いたこの作品だ。

中央にいる女性が節制の隠喩だ。彼女は節制を表す小道具を身に着けている。頭上には時計、口には轡、右手には手綱、左手にはメガネ、そして腰に巻いている帯は生きているヘビ、蛇は賢さの象徴だ。

擬人画を囲んで、七つの自由学芸の隠喩が描かれている。文法(前景右)、算術(前景左)、音楽(中景左)、論理(中景右)、幾何学(後景右)、天文学(後景中)、修辞学(後景左)だ。





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