壺齋散人の 美術批評 |
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ヴェネチアの砦―アルコ:デューラーの水彩風景画(浮彫り画法) |
右上に"venedier klawsen(ヴェネチアの砦)"と記されているが、場所は北イタリア、ガルダ湖の北のアルコ。デューラーは、1495年の春にヴェネチアからニュルンベルグに向かう途中、この山の麓から見上げるようにしてこの絵を描いたのだと思われる。 この絵を見ると、そこにある特徴があることに気づく。中心部に近いところがやけに細密に描かれるいっぽう、周辺部はさらりと描かれていることだ。このように、画面の中心を意図的に浮かび上がらせる手法を「浮彫り画法」と呼ぶことがある。中心部を浮彫のように浮かび上がらせるために、中心と周縁を強い対立に置く画法である。 イタリア旅行中にデューラーの描いた水彩風景画にはいずれにも、山とか樹木の林とかのメインモチーフがある。デューラーはそうしたモチーフを丁寧に描き上げる一方、周縁部をさらりと描き、ときにはフェードアウトのように扱うことで、画面にメリハリを与えようとした。その点で、デューラーは絵画におけるモチーフの意義を強調した最初の画家の一人と言えるのではないか。 (羊皮紙に水彩とグアッシュ、22.3×22.3cm、パリ、ルーヴル美術館) |
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