壺齋散人の美術批評 |
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オートマット:ホッパーの世界 |
オートマットとは、自動販売機を設置したセルフサービスのレストラン。1920年代のアメリカで流行った。この絵は、そのオートマットでコーヒーを飲む一人の女性を描く。モデルはホッパーの妻ジョー。ジョー自身は、彼女をモチーフにした裸婦像からうかがわれるように、女性的で豊満な肢体だったが、この絵の中の女性は、やせぎすで、ボーイッシュに見える。この時ジョーは44歳になっていたが、絵の中ではずっと若く見える。 背後のガラスの中の空間が真っ黒に塗りつぶされており、その中で天井に並んだライトが列をなして光を放っている。その光に照らされる形で、女性の姿が浮かび上がってくるのだが、なぜか女性はうつむき加減で、孤独の影を感じさせる。 影といえば、光が作る影がちょっとリアルさから逸脱しているように見える。ライトは部屋の真上にあるはずだが、その光の方向がやや複雑な印象を与える。テーブルの上が明るいのは理解できるが、背後のガラス窓の桟の上部表面が明るすぎる。そのため、女性のかもしだす遠近感に乱れが生じているように見える。 女性は一応おめかしをしているように見えるから、おそらく勤め先からの帰り道にこの店に寄ったのだろう 構図的には、女性の配置が画面の下により過ぎている印象はある。 (1927年 カンバスに油彩 71.4×91.4㎝ アイオワ州 デモイン美術センター) |
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