壺齋散人の美術批評 |
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鉄道の夕日:ホッパーの世界 |
ホッパーは、鉄道の線路を繰り返し描いた。それも都会の鉄道ではなく、大草原地帯を走る線路だ。ホッパーはそれに、文明と野生との交わりを見たのだろう。ホッパーはアメリカの大都会の空気にずっぽりつかりながら、自然を描くのが好きだった。しかしその自然は、ありのままの自然ではない。なんらかの形で人間との交わりを感じさせる自然だ。 「鉄道の夕日(Railroad sunset)」と題するこの作品は、遠い地平線からわかるように、どこまでも広がる大草原の中を走る鉄道線路を描く。大草原のはるか彼方の地平線に、いままさに陽が落ちて、地平線を赤く染めている。鉄道の線路が光って見えるのは、その夕日を浴びたからではなく、細長い柱のランプの光を浴びてのことらしい。 その線路の手前側に、監視小屋のようなものが立っていて、これもまた側面の一部にライトの光があたっている。 線路の向こう側に広がる草原は、ほぼ黒く塗りつぶされているが、一部が渋いグリーンで細長く塗られている。それが波だっているように見えるので、おそらく風になびいているのだろうと思わせる。 人間のいない冷ややかや眺めであるが、監視小屋と細長い電柱が、人間の介在をかろうじて感じさせる。 (1928年 カンバスに油彩 71.8×121.3㎝ ニューヨーク、ホイットニー美術館) |
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