壺齋散人の美術批評 |
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夜のオフィス:ホッパーの世界 |
「夜のオフフィス(Office at Night)」と題するこの作品も、閉じられた空間を描いたもの。事務室の狭い空間に二人の人物が描かれている。一人はデスクに向かっている中年男で、もう一人はその男を見下ろしている若い女。女はオフィスにいるにしては、肌や体の線を露出させるような挑発的ななりをしている。それに対して中年男のほうは、女の存在をまったく気にしていないようだ。書類を扱っているところから、弁護士とか会計士を連想させる。 左手前の机の上に乗っているタイプライターは、たぶん若い女の仕事道具なのだろう。だとすれば彼女は、中年男の秘書である可能性が高い。男女が仕事の上でのこととはいえ、狭い空間に一緒にいるということは、インテリジェントな個人事業者にとってはよくあることである。 ホッパーはこの絵の構図を、電車の窓から眺め下ろしたオフィス街の光景にヒントを得たと言っている。高架式の線路からなら、このような光景をちらりと垣間見ることはよくある。その瞬間的なイメージをもとにして、ホッパーはこの絵の構図を定めたのであろう。 寒色主体の、寒々とした印象の画面である。わずかに、布のブラインドが風に揺れているところに、空気の流れを感じさせられる。それがないと、いかにも静寂な印象の強い作品である。 (1940年 カンバスに油彩 56.2×63.5㎝ ミネアポリス、ウォーカー・アート・センター) |
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