壺齋散人の 美術批評
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マグダラのマリアの回心:カラヴァッジオの世界




これもマグダラのマリアの悔悛あるいは回心をモチーフにした作品。福音書におけるマグダラのマリアの事跡は、イエスの晩年にかかわるもので、すでにイエスに従う女性として描かれており、それ以前の回心についての記述はない。したがって、マグダラのマリアの回心にかかわる話は、みな伝説とか臆見のたぐいである。それゆえ、その場面をテーマにするものは、作者の創造によるものが多い。カラヴァッジオの場合も例外ではないだろう。

カラヴァッジオは、自分の意思でこの絵を描いたのではなく、注文を受けて描いたのだと思われる。当時マグダラのマリアの回心は、絵のモチーフとして人気があったから、それを特に注文する人もいたのだろうと思われる。

この絵の中のマリアは、もう一人の女性(聖マルタとされる)と何かを話している。女性が一生懸命に話すのに対して、マリアの表情はうつろである。右手で小さな花を持ち、左手で大きな鏡をなでているが、これらはふしだらな暮らしの象徴だと思われる。それらを捨てて、回心しようというふうに見える。

モデルは、フィリーデ・メランドローニ。アンナ・ビアンキーノと仲がよく、やはり娼婦だったとされる。と言っても街娼のような賤しい売春婦ではなく、高級コールガールだったようだ。カラヴァッジオは彼女が気に入ったようで、何点かの絵のモデルに使っている。

(1598年頃 カンバスに油彩 100×134.5㎝ デトロイト、デトロイト美術学院)




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