壺齋散人の美術批評
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カルロス四世とその家族 ゴヤの肖像画




ゴヤがカルロス四世によって宮廷画家に任命されるのは1789年のことだが、有名な「カルロス四世とその家族」を制作するのは1800年のことである。版画集「カプリーチョス」を1799年に出版している。この家族の集団肖像画の制作には、王妃マリア・ルイーサの意向が強く働いているとされる。

巨大画面の中央をしめるのは国王カルロス四世ではなく、王妃マリア・ルイーサである。王妃は夫を尻に敷くばかりか、ゴドイという愛人を作るほどの女傑だった。ゴドイが宰相になれたのは王妃のおかげだった。そのマリア・ルイーザは美しいとはいえなかった。だからゴヤは、多少戸惑ったと思う。ありのままに描けば醜女になってしまうし、といって理想化すれば本物から逸脱してしまう。そこでゴヤは、顔つきを曖昧に描く一方、マリア・ルイーサが自慢にしていた腕の美しさを強調することでバランスをとった。

肝心の王は右に寄せられ、その分威光がそがれている。体格も王妃とかわらない。左側のブルーの服をきた少年は、皇太子フェルナンドである。ゴヤ自身も左端に、カンバスを前にした姿で描かれている。ベラスケスの「ラス・メニーナス」を意識したのだと思う。

(1800年 カンバスに油彩 280×336㎝ マドリード、プラド美術館) 



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