壺齋散人の美術批評
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イギリスの風景画 代表作の鑑賞と批評


イギリスは、芸術よりも実利を優先する国民性であるから、たいした美術的伝統はもたない。イギリス美術といえば、まっさきに思い浮かぶのは、18世紀後半から19世紀にかけて花開いた風景画である。それもイギリスの風景を題材にした作品が大部分である。イギリスは、平坦な地形が多いので、風景画の題材となるようなダイナミックな自然景観には乏しいのであるが、かれらイギリスの画家たちは、そこをなんとか工夫して変化に富んだ風景画を制作した。イギリスの風景画は、オランダの風景画の伝統に学ぶところから出発し、ターナーのようなイギリス独自の抽象的風景画というべきものにたどり着いた。ここでは、18世紀後半から19世紀前半にかけて活躍した四人の風景画家をとりあげて鑑賞したいと思う。

まず、トーマス・ゲインズバラ(1727-1788)。ゲインズバラは、リチャード・ウィルソン(1714-1782)と並んでイギリス風景画の基礎を築いた画家である。二人ともロイスダールなどオランダの風景画に学ぶことから始め、独自の境地を確立した。ゲインズバラは、肖像画のほうに有名な作品が多いが、それは、かれの時代には、画家は肖像画の制作によって経済的な基盤を固める必要があったからである。かれの場合には、肖像画の背景としてイギリスの風景を描くことで、好きな風景画への情熱を発散させていた。晩年には、遺産の相続もあって、経済的な基盤ができたので、もっぱら好きな風景画を描くようになる。

次にトーマス・ジョーンズ(1742-1803)。ジョーンズは、ウィルソンやゲインズバラなどイギリス風景画の最初の世代を、コンスタブルやターナーなど次の世代へつなぐ役割を果たした画家である。当初は、ゲインズバラやウィルソンの画風を模倣していたが、次第に独自の境地を確立していった。とくに、イタリア旅行中に制作したナポリの街景を描いた作品は、建物の質感の表現に、現代絵画に通じるものを感じさせる。

ジョン・コンスタブル(1776-1837)は、ターナーとならんでイギリス風景画の頂点を極めた画家である。イギリス風景画の伝統の体現者かつ完成者として、海外の評価も高い。ゲインズバラと同じくイングランド東部のサフォーク州に生まれ育ち、その地の風景を描き続けた。とくに幼いころの思い出が詰まった故郷の風景にこだわった。かれの傑作と呼ばれる作品の大部分は、故郷の村をモチーフにしたものである。そのサフォーク地方は非常に平坦な地形で、画面が単調になるおそれがあるので、樹木や水を適度に入れることによって、画面に変化を与えようとした。

J.M.W.ターナー(1775-1851)は、コンスタブルの同時代人であり、ともにイギリス風景画の巨匠といわれた作家である。コンスタブルが、あくまでもイギリス風景画の伝統のなかで制作したのに対して、ターナーは、かれ独自の画風を追求した。それは、風景の具象的な表現にはとらわれず、時には抽象画を思わせるような大胆な表現を追求したということである。そのため、かれの作品は、現代絵画に通じるものとの評価が高い。ターナーはまた、水彩画の巨匠としても知られる。というか、水彩画の自由な雰囲気を油彩画にも取り入れたことが、彼独自の画風の確立につながったといえる。


トーマス・ゲインズバラの風景画

樹木のある風景 ゲインズバラの風景画

アンドリューズ夫妻 ゲインズバラの風景画

小川と堰のある風景 ゲインズバラの風景画

市場からの道 ゲインズバラの風景画

少女と子豚 ゲインズバラの風景画

羊飼いのいる海景 ゲインズバラの風景画

ハーベスト・ワゴン ゲインズバラの風景画

マーケットカート ゲインズバラの風景画


トーマス・ジョーンズの風景画

吟遊詩人 トーマス・ジョーンズの風景画

ワイ川の眺め トーマス・ジョーンズの風景画

アルバノ湖 トーマス・ジョーンズの風景画

ナポリの建物 トーマス・ジョーンズの風景画

ナポリの壁 トーマス・ジョーンズの風景画


ジョン・コンスタブルの風景画

白馬 コンスタブルの風景画

ストラットフォード・ミル コンスタブルの風景画

乾草車 コンスタブルの風景画

ソールズベリー大聖堂(司教の庭から) コンスタブルの風景画

水門 コンスタブルの風景画

コーンフィールド コンスタブルの風景画

デダムの谷 コンスタブルの風景画

ハドリー城 コンスタブルの風景画

牧草地から見たソールズベリー聖堂 コンスタブルの風景画


ターナーの風景画

ヴェニス ターナーの風景画

月光下に石炭を積み込みする乗員 ターナーの風景画

戦艦テメレール ターナーの海景画

奴隷船 ターナーの海景画

のろしと青い光 ターナーの海景画

吹雪 ターナーの海景画

平和ー海上埋葬 ターナーの海景画

雨、蒸気、スピード ターナーの風景画

ノラム城、日の出 ターナーの風景画



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